【行雲流水】2024年9月24日付

2024年9月24日

 某月某日

 

 富士裾野で役員合宿。緑陰に包まれた環境で中長期の課題を俯瞰する。今年のテーマは「危機管理」と「創立80周年記念事業」。
 「もし…」を想像することはリスク・マネジメントの要諦である。もとより零細企業ゆえ仕事が属人的になりがちではある。「もし○○君が倒れたら」「もし○○が起きたら」等々、ボーイスカウトのモットー「そなえよつねに!」である。
 そして、再来年は創立80周年となる。75周年では、現在の「活字文化フォーラム」につながる記念シンポジウムや「ふるさと新聞アワード」を記念事業として始めた。100周年に向けた更なる種まきをいくつか試みたい。私からは書店事業を始めたいと水を向けるも反応はイマイチ、継続審議…。
 夕刻よりバーベキュー。賄い係で多忙な私、鯨飲する山口高範、星野渉は大口を開けて早々に爆睡。

 

 某月某日

 

 伊藤忠商事に岡藤正広会長をたずねる。『味の手帖』の巻頭対談のホストは2020年に牛尾治朗さんが抜けられたあと、茂木友三郎、宮内義彦両氏が隔月で務めるも、今なお超多忙なお二人である。牛尾さんの〝跡目〟として、岡藤さんに白羽の矢を立てた次第。4月号の鼎談から三人態勢となる。
 「初回のゲストはあなた方(夫婦)がえぇなあ」との呟きは編集長権限でスルーさせてもらう。ファッションやスポーツ関係など、多彩なゲストとのユーモアあふれる掛け合いが楽しみなことである。

 

 某月某日

 

 食品業界のオーナー経営者勉強会。食文化研究家で、慶應義塾大学SFC上席研究員として納豆菌タンパク食材「kin―pun」の研究に取り組む28歳の才媛、長内あや愛さんを講師に招く。
 タンパク質食材として牛の生産日数は720日、大豆が180日かかるのに対して、納豆菌はわずか5日。地球上でもっとも生産性が高い納豆菌は、環境や人口問題の解決策として瞠目に値する。 
 もう一つの研究テーマ、「福澤諭吉の食文化貢献」の話も聞かせる。初代米国公使ハリスが所望しても飲めなかった牛乳。福澤は「肉食之説」を著し、肉食と牛乳(と学問)をすすめ、自らも牛鍋屋に通い豚肉を解剖し食した。ノリタケ、雪印、明治屋、丸善(創業者・早矢仕有的がハヤシライスの生みの親)などの創業を門下生とともに働きかけたという。長内さん、明治期の復刻再現料理を提供する店「食の會 日本橋」も経営している。【代表取締役・山口健】