本の敵はNetFlix
文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、1カ月に本を1冊も「読まない」が6割を超えたことが大きく報じられた。前回調査(2018年度)まで40%台だったのが急激に上昇したからだ。この間はちょうど新型コロナウイルス感染症が広まった時期だ。
調査は国語への関心や外来語、慣用句への意識などを調べるため毎年実施しているが、読書については08年度から5年おきに調べている。前回調査は感染症が本格化する前の19年3月に実施された。
冒頭の「読む本の冊数」についての問いは、雑誌や漫画を除き、電子書籍を含めている。08年度調査で46・1%、03年度は47・5%、18年度は47・3%とほぼ変わらなかった「読まない」の割合が、その後5年で62・6%と急拡大した。
「読書量が減っている理由」は「情報機器」が前々回26・3%から前回36・5%、そして今回43・6と上昇。一方、電子書籍の利用も「よく利用する」「たまに利用する」を合わせて40・3%と、前回25・2%より大幅に増えた。コロナ禍以降電子で漫画を読むことが増えているという傾向と符合するし、それ以上に本以外のコンテンツに時間を取られていると思われる。
以前、ドイツを訪問した時、出版業界団体の役員が「本の敵は電子書籍ではなくNetFlixだ」と話していたことを思い出した。【星野渉】