畑の師匠が亡くなった。私が通う菜園では70代、80代のベテラン師匠に囲まれている。中でも、私が野菜を作り始めた当初、隣の区画から真っ先に声をかけ、世話を焼いてくれたご夫婦がいた。「そんなんあっかいな～」と手を入れてくれた豪快な旦那さんは6年前にがんで他界。奥さん一人で畑を続けられるかを心配する言葉を何度も聞いた。その後も奥さんは良い土をつくり、立派に菜園を維持された。私はその技をマネさせてもらった◆先月初め「熱中症でしばらく休んでいた」と久しぶりに声を聞いた翌日入院し、わずか1週間で悲しい知らせとなった。持病もあったと聞くが、酷暑の中で無理をしてしまったのか。70代後半では少し早すぎる◆一方で新しい出会いもある。別の区画でベトナムの若い人たちが野菜作りを始めた。まったくの素人らしい。手始めにベトナム語の「こんにちは」と「さようなら」を覚えた。 【櫻井俊宏】