【出版時評】2024年10月22日付

2024年10月23日

商品特性による「買切り」「割引」の使い分け

 

 ブックセラーズ&カンパニーは出版社と直接取引することで、書店の粗利益率を30%以上にすることを目指し、対象出版社の全銘柄を返品歩安取引する「販売コミットモデル」と、単品契約の買切取引「返品ゼロモデル」を提案している。

 

 取引出版社は11月で12社となるが、先日開いた当社のセミナーに登壇した宮城剛高社長によると、今年4月以降、参加書店全体での取引出版社の実績は前年を超えており、返品率も減少。書店の粗利益率30%台を確保している。

 

 宮城社長は長年在籍した米国店での経験から、新刊、既刊、ベストセラー、フェア・仕掛けについて、「買切り」と「割引」の向き不向きを説明した。予想が難しい新刊はリスクを避けるため買切りにしないが、競争のため割引する。一方、既刊は買切るが割引はしないなど。そして「既刊が利益の源泉なので最も力を入れた」と話した。

 

 商品の特性に応じて取引条件や販促方法を変えて、お客へのアピールと利益確保するという発想は、これまで日本の書店にあまりなかったのではないか。

 

 同社がやろうとしていることは、日本で異質に見えるだろうが、むしろ欧米などでは一般的な書籍の販売方法だといえる。従来の日本型出版流通が行き詰まる中、この方向しかないと思うのだが。今のところ出版社の反応は今一つ鈍いように見える。【星野渉】