【出版時評】2024年10月29日付

2024年10月28日

書店と図書館の関係見直す契機に

 

 読書月間に向けて、本紙ではこのところ話題になる書店と図書館の関係について特集している。本号では図書館流通センター(TRC)・谷一文子社長と、書店組合で図書館委員長を務める高島書房・高島瑞雄社長の対談を掲載した。今後、海外での事情なども紹介していく予定だ。

 

 長年、図書館問題に取り組んできた高島社長は、書店が汗をかいて図書館や行政に働きかけることが大切で、そのためには図書館が書店にとって「実利」のある場になる必要があると指摘。そこにTRCがどう関わるかとも。

 

 また、熊本県書店商業組合熊本市支部が市に陳情した「市立図書館の書籍購入方法について」の審議中継を見たが、発言する議員は総じて地元書店を支えることに積極的で、全国で無書店自治体が増えていることなどをあげて発言している。書店議連や経済産業省の取り組みで、書店への関心が高まったことの表れだといえる。

 

 次号で紹介する海外の状況を見ると、それぞれの国で仕組みや抱える課題はさまざまだ。禁書運動で揺れるアメリカ、公共図書館が減少しているイギリス、電子書籍の早期貸し出し法案に出版業界が反発しているドイツなど。

 

 日本で図書館と書店の関係について、ここまで広範に議論が盛り上がることは珍しい。この機会により良い関係を築いてもらうため、参考にしていただきたい。【星野渉】