【出版時評】2024年11月26日付

2024年12月2日

出版社のグループ化

 

 ソニーがKADOKAWAを買収する協議に入っているとのニュースが流れた。協議の詳細や見通しは不明だが、実現すれば国内メディア企業のM&Aとしては大きな規模である。

 

 これまで国内では、メディア企業、特に出版社を巻き込むグループ化は少なかった。それこそ積極的にグループを拡大してきたのはKADOKAWAぐらいだ。しかし、海外に目を向けると、主要出版社はそれぞれ多くの出版社を傘下に抱え、その大手出版社自身も巨大メディアグループに属している。

 

 日本の出版業界でグループ化が進まなかったのは、国内市場が安定していたためだ。特に取次の仕組みによって、小出版社でも物流や決済など商物流のインフラを利用することができたため、日本にはほかの主要国に比べて独立系出版社が多い。

 

 しかし、流通システムに急速な変化が迫られるなか、存続のためにグループ入りを選択する出版社も増えてきた。デジタル対応や海外展開のためには規模も必要になり、こうした傾向は強まるだろう。

 

 アメリカで大手出版社による中小出版社の買収が進んだ頃、出版の多様性が失われることが懸念された。しかし、それぞれレーベルと編集機能を存続させて、出版社の独自性は維持されているという。インプリントと呼ばれるこの方法が日本でも広がるのであろうか。【星野渉】