【出版時評】2024年12月10日付

2024年12月9日

直接取引拡大が課題解決の道筋か

 書店が厳しいと言われる中、紀伊國屋書店の決算は4期連続で増収増益。大学などへの法人外商や海外店舗が伸びているのはもとより、国内店舗の売上高も期中の新規出店が1店舗だったのに前期比3・2%増加している。決算会見で藤則幸男社長は「決して業界は斜陽産業ではないことを証明していきたい」と自信を示した。

 

 大手取次会社による出版流通網の維持が難しくなる中、取次は正味が高いと言われてきた医学書などの扱いを減らしている。そのため、医学書などを多く販売してきた紀伊國屋書店は直接仕入れに切り替えており、取次ルートで流れなくなった分を取り込んで、医学書の売上が伸びているという。

 

 出版社との直接取引を推進するため、同書店がカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と日本出版販売(日販)とともに立ち上げたブックセラーズ&カンパニーは、来年1月以降、新たに出版社3社との取引を開始し、4書店が加わると発表した。これまで参画書店はCCCや日販のグループ書店が中心だったが、山形県の八文字屋や京都のふたば書房など広がりを見せる。

 

 日本の書店は時代に合わせて店舗の魅力を高めることとともに、出版物の収益構造を変えることが課題だ。直接取引の拡大が解決の端緒であることが見えてきたように感じる。【星野渉】