【出版時評】2024年12月24日付

2024年12月24日

出版、書店への思い強かった渡辺恒雄氏

 

 本年も最終号となったが、読売新聞グループ本社の渡辺恒雄代表取締役主筆の訃報が入ってきた。新聞業界はもとより、出版社や書店への思い入れも強く、厳しい経営環境にあった中央公論社をグループ化し、特約書店会の「書店読売中公会」や出版社を集めた「読売出版懇親会」には体調が許せば必ずといってよいほど顔を出した。その思いは山口寿一読売新聞グループ本社社長に引き継がれている。

 

 11月に一報が流れ業界を震撼させたソニーグループによるKADOKAWAへの出資が発表された。ソニーグループが株式の10%を持ち筆頭株主になるとのことだが、日本の出版業界でも、これから本格的にコンテンツのマルチ展開とグローバル展開が業界や企業の枠を超えて広がる兆しと見てよいだろう。

 

 経済産業省の「書店振興プロジェクトチーム」は、パブリックコメントを実施したが、結果の公示とその後の展開が気になるところだ。書店議連は会長が交代したが、経産大臣を退いた齋藤健氏が引き続き幹事長として力をふるうようだ。盛り上がった書店支援の流れを持続的な動きにしていくための取り組みが重要になる。

 

 PubteXの書店RFIDは来春から本格化する予定だ。動き出したブックセラーズ&カンパニーは年明けから取引出版社、参画書店が拡大する。これらの動きも注目の1年になる。【星野渉】