出版物海外展開の可能性を広げたい
国内市場が飽和する中、海外に関心を向ける出版社は、マンガを発行する大手に限らず増えている。インバウンドで来日する外国人はわれわれが意識しないような地域や商品に魅力を感じるようで、出版物もいろいろとトライしてみる価値は大いにある。
韓国の文学やエッセイが日本で人気となってからそれほど時間は経っていない。『82年生まれ、キム・ジヨン』から急に注目を集め始めたように見えるが、その背景には、海外に韓国文学を紹介しようとする長年の努力がある。
韓国では政府機関が出版物の海外展開をサポートしている。海外ブックフェアへの出展支援や、韓国作品を刊行する海外出版社への助成などだ。国際ブックフェアで同国の大きなナショナルブースを目にすることも多い。
弊社セミナーに登壇したトーハン海外事業本部の五十嵐正孝部長は、マンガを除くと既に海外展開の数は韓国が日本を上回るのではないかと指摘した。それは、多くの出版物を海外に紹介し続ける不断の努力の賜物だろう。
日本で出版物の海外展開は出版社やエージェントなどが担う。それぞれ成果を上げているものの、企業が単独で需要があるかどうかわからない作品のトライを続けるのは難しい。今でも政府による出版物の海外展開支援はあるものの、今以上に点を面に広げるようなサポートができないかと感じる。【星野渉】