【出版時評】2025年2月4日付

2025年2月3日

 

RFIDに取引の多様化を期待

 

 PubteXが出版物のRFID管理「BOOKTRAIL」の商用サービスを開始した。まずは流通や店頭業務の効率化が期待されるが、出版業界の取引制度を改革するうえで大きな障害になってきた〝一物一条件〟を克服することができれば、取引の多様化、そして書店ビジネスの幅を広げる可能性もある。

 

 まずはコミックスへのタグ貼付からスタートする。PubteXに出資している講談社、小学館、集英社、そしてKADOKAWAが既に貼付を開始し、この後もコミックス出版社が加わるという。書店は6法人9店舗でスタートし、年度内に100店舗の導入を目指す。タグ付と書店の導入がどれだけのスピードで進むかが普及へのカギだ。

 

 RFIDは現在のバーコードと違って、1冊ずつの個品管理が可能だ。同じタイトルであっても、出荷先やロット、時期によって別の個品として管理できる。

 

 今後、取次や書店への出荷から、店頭在庫、販売、返品などのタイミングでトレースできるようになれば、同一タイトルでも正味や買切り・返品可など条件を変えても識別することができるだろう。

 

 これまで難しかった同一アイテムでの別条件設定が容易になれば、書店が売れる見込みがあれば高粗利買切り、なければ委託といった選択も可能になる。喫緊の課題である取引改革のためにも推進してほしい。【星野渉】