某月某日
『味の手帖』の取材で、是枝裕和監督とランチを一緒する。
映画の道へ進んだのは、洋画好きの母と観ていたテレビの影響が大きかった。早稲田大学進学後、年間1万円のフリーパスで毎日(!)映画館に足を運んだという。志の低い私なぞは、東急時代に関連会社の先輩から頂戴したタダ券で毎週末暇つぶし。先輩には映画の感想ではなく、「ポップコーンにはビールが合うのになぜ売らないんですか」と苦言を呈した。その後ビール販売が当たり前になった頃、あれはオレの進言のタマモノと自慢していたが、多分関係ない。
是枝さん、重労働のわりに低賃金である労働問題やハラスメントなど、映画業界が抱える問題を解決するための活動にも力を入れている。フランスでは興行収入の11%、韓国は3%が自動的に活動団体に徴収されているが、日本では門前払い。1%ですら作り手に還元しようとする文化がないと。
某月某日
出版・書店経営者8人で、「みんとしょ」を展開するNPO法人わかもののまち・土肥潤也代表理事の話を聞く。焼津市出身30歳。
「みんとしょ」とは、「一箱本棚オーナー制度」と呼ばれる仕組みで、月額2000円の棚代を支払ったオーナーが選書した本を置き、利用者は気に入った本を自由に借りられるというもの。2020年3月に焼津に初めてできた「みんなの図書館さんかく」では60の棚が埋まり、キャンセル待ちも。
動物愛護に関する本が並ぶ棚や温泉愛にあふれる棚、ALL広瀬すずの写真集(自宅におけない?)など様々。棚オーナーには、「店番をする権利」があり、店番の人々が様々なコミュニティ活動を行い高齢化・過疎化に悩むUR団地や商店街の活性化に一役かっている。
5年間で全国90館ほどに拡大し本棚オーナーも6000名以上に。恥ずかしながら、私をはじめ、小社・星野も増田も知らなかった。
某月某日
30年来敬愛する畏友、タベアルキスト・マッキー牧元さんの古希を祝う会が虎ノ門ヒルズ「虎ノ門横丁」を貸し切って開催される。
さすが、日々多くの食の匠たちと交流しているだけあって、全国から約50名のシェフや蔵元が参集し提供する料理を、主役と同類の食いしん坊たち600人が食べること呑むこと、夥しい…。
こうした催しができるのは、後にも先にも牧元さん一人だろう。その人徳のなせる宴に、満腹。