【出版時評】2025年2月25日付

2025年2月25日

 当初はいろいろな見方があった書店の無人営業だが、広がる様相を見せている。三洋堂書店はインショップなどを除く全店に拡大することを計画し、取次による施策にも取引書店からの問い合わせが多いという。

 

 無人営業は、利用者が顔認証やLINEアプリの友達登録などで入店し、セルフレジのキャッシュレス決済で購入する。客注品を受け取るボックスを設置したり、遠隔でのコールセンター機能を加えたりもする。

 

 営業時間をすべて無人で運用するケースもあるが、このところ昼間は有人で夜間や休日を無人にする「ハイブリッド」が主流になりつつある。既存店に導入すれば、それほど大きな投資をせずに、人件費をかけずに営業時間を延ばせて、売上増が見込めるためだ。

 

 懸念されていた万引き被害は、むしろ入店登録しているため防犯効果が高く、今のところ各導入書店とも、ほぼ皆無だという。また、これに合わせてセルフレジを導入すると、有人時間帯にレジ要員を減らすことができるというメリットもあるという。

 

 これからますます人件費が上がり、人手不足は深刻になる。もともと賃金水準が低い書店の労働力不足は経営の継続にもかかわる課題だ。無人営業がこの課題解決に結びつくのか注目したい。【星野渉】