【出版時評】2025年4月22日付

2025年4月22日

東京版権説明会が公式イベントに

 

 日本の出版物を海外の出版社やエージェントにアピールする東京版権説明会(TRM)は、今年から出版文化産業振興財団が主催者となって業界の公式イベントとなる。そして、会場はこれまでに比べて倍の規模となり、海外からも出展者を招くという。本格的な国際図書展示会への歩みを始めるのだろう。


 マンガはもとより、日本の出版物は海外、特にアジアでは広く受け入れられている。日本で韓国本がブームになっているとはいえ、依然として日本語からハングルに訳される本の方が多い。少し前だが、中国で最も売れる小説家は、J・K・ローリングのあと東野圭吾になったという。


 そんな日本で正式な国際図書展が開かれないというのは、なんとももったいない話だ。かつての東京国際ブックフェア(TIBF)はいろいろと意見はあったものの、会期中に海外から多くの出版人が来日していた。中止のニュースが伝わったとき、「これからどうやって日本に行けばいいのか」と中国の出版人から問い合わせを受けた。業界団体などの公式なイベントでなければ出国の許可が下りにくいというのだ。


 TRMはTIBFがなくなったことに危機感を持った出版社の有志が始めた。その体制で5回も続けたのは、彼らの努力と、やはりニーズがあるのだろう。出版業界で海外市場に注目が集まるなか、期待したい。【星野渉】