株式会社新潮社
新田次郎文学賞とは、前年に発表された小説、伝記、エッセイ、ノンフィクション等の作品から選考され、併せて自然界(山岳、海洋、動植物等)に材をとったものも対象となっています。1982年の創設以来、沢木耕太郎、宮城谷昌光、佐々木譲、澤田瞳子、原田マハなど錚々たる受賞者を世に送ってきました。
受賞作は、これまで女性を主人公とした歴史ロマンの書き手として幾多の作品を発表してきた著者の、初めての書き下ろし海洋歴史小説です。江戸中期、播州高砂の漁師から身を起こし、大胆不敵な船乗りとして名を挙げ、やがて時代を先取りする海商にのし上がった松右衛門。当時の千石船の弱点だった帆の改良に自ら取り組み、苦難の末に画期的な「松右衛門帆」を完成させて、江戸海運に一大革命をもたらすことに。あの高田屋嘉兵衛が憧れた知られざる快男児と、彼の人生に伴走した四人の女たちが、情感を込めて描かれます。
本作の読みどころは、著者の丹念な取材によって活写されている、江戸時代の北前船の航海のありさまです。故郷の播州高砂から金刀比羅宮までの船旅に始まり、拠点となった兵庫津(現在の神戸)の賑わい、大坂から江戸への「木綿船レース」の興奮、日本海から蝦夷地にいたる北前船の危険な道行きなど、海洋小説としての魅力が存分に味わえます。一方で、著者が得意とする男女の恋愛ドラマも、ファンの期待を裏切らない充実ぶり。若き日の憧れの人、苦楽を共にした同志ともいえる妻、そして航海先の越後で出会う薄幸の女性など、主人公と共に歩んだ四人の女性の姿は、読者の強い共感を呼ぶことでしょう。
昨年の刊行後、全国主要各紙で取材を受けたほか、MBSラジオの人気番組「ありがとう浜村淳です」に出演し、自ら作品をアピール。兵庫県出身であり、関西圏の女性を中心に熱烈な支持者を持つ玉岡氏ですが、今回の受賞で再び注目が集まっています。
■著者コメント
白帆を掲げたちっぽけな船が、風に恵まれ、満ち来る潮に押されて、蒼海のただ中に進み出た、そんな気持ちです。皆々様に、感謝尽きず。人生最良の凪の日です。
■著者紹介:玉岡かおる(タマオカ カオル)
1956(昭和31)年、兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒。1987年『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で神戸文学賞を受賞し、作家デビュー。2009年、『お家さん』で織田作之助賞受賞。主な著書に『天涯の船』『銀のみち一条』『自分道』『虹、つどうべし』『ひこばえに咲く』『負けんとき―ヴォーリズ満喜子の種まく日々―』『天平の女帝 孝謙称徳』『花になるらん』『姫君の賦 千姫流流』などがある。
■書籍概要
【タイトル】帆神 北前船を馳せた男・工楽松右衛門
【著者名】玉岡かおる
【判型】四六判(448ページ)
【定価】2,200円(税込)
【ISBN】978-4-10-373717-9
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/373717/
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著者初の海洋歴史ロマン! 玉岡かおる『帆神 北前船を馳せた男・工楽松右衛門』が、第41回新田次郎文学賞を受賞!
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2022年4月25日
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